ムシ歯が生える、子どもたち
診療室に入ってくるなり、赤ちゃんを抱きかかえた若いお母さんは、
こういいました。「うちの子はムシ歯が生えてきたんです」 一歳に
なるかならないかのその赤ちゃんの口の中を見ると、チョコンと生えた
ばかりの歯がまっ黒。お母さんの目から見れば、ムシ歯が生えてきた」と
しか思えないのも無理はありません。

もちろん、はじめからムシ歯が生えてくるわけではありません。口の中に歯がほんの少し頭を出したときから、もうすでにムシ歯におかされてしまったのです。「昔は、こんなことはまず考えられませんでした。
たとえば第二次大戦以前の統計をみると、3歳以下のムシ歯罹患率はせいぜい3~5%程度のものです。それもクル病や生まれつきからだが 弱い子どもだけだったようです。
ところが最近では、三歳児の10人に9人はムシ歯があるといわれます。ある日診療室にとび込んできた若いお母さんの話は、決して例外ではないのです。
幼児のムシ歯については、こうして数が増えただけではありません。そのムシ歯のひどいこと。
昔の子どものムシ歯の代表は、いわゆるミソッ歯でした。前歯のまわりが茶褐色になってボロボロと欠けてくる慢性のムシ歯です。これはゆっくりとしか進行しませんから、歯髄がおかされて痛み出すまでにはかなり時間がかかります。全身的な影響も、さほどはありません。ですから、たとえミソッ歯でも、あと一年ぐらいで生えかわるという時期ならば、放っておいてもあまり問題にはなりませんでした。ところが、最近の幼児のムシ歯はまったく違います。あっという間に歯髄までおかされてしまう、悪性のムシ歯なのです。痛いから、幼児はよく泣きます。 毎晩のように「イタイヨー、イタイヨー」と泣いてばかりで、半分ノイローゼになったお母さんもいます。かむと痛いので、食欲も低下してしまいます。肉や生野菜など少しかたいものは食べられませんから偏食が目だちます。
人間が成長するのに一番大事な食事が十分にとれないとなれば、当然、発育にも重大な影響が出てきます。
ひどいムシ歯におかされている子どもは、見ればすぐにわかります。偏食のため独特の青白い肌をしていて、ふっくらとした感じなのです。一見して上品でおとなしそうですが、元気がありません。ムシ歯は、ただ単に口の中だけの問題ではないのです。一般にムシ歯は、いのちやからだ全体にとってそれほど重大なものではない、といった風潮がありますが、とんでもありません。ことに子どもの歯は、全身的な発育に、非常に重大な影響があります。

砂糖がなぜムシ歯を作るのか
なぜこれほどまでに、幼児のムシ歯が増えてきたのでしょうか。 「誰でも考えるのが、甘いものの害です。文部省の統計によれば、わが国の小学童のムシ歯罹患率は、戦前は70%前後でした。戦後、昭和26年には42.2%と最低となりましたが、それ以後はムシ歯が増えつづけ、昭和45年には93.5 %にまで達しました。
その間の砂糖消費量を比べてみたのが、グラフ1です。 「国民一人あたりの年間の砂糖消費量は、戦前は15キログラム前後でしたが、戦争が始まると、それもむずかしくなりました。
砂糖は、配給になって、店先からまっ先に姿を消したのは、あまいお菓子でした。戦後もしばらくのあいだは、砂糖などは貴重品と同じで、大事に少しずつ使ったものです。
グラフを見ていただければおわかりのように、そんな戦中・戦後もやがて忘れられるかのように、甘いものが、大量に出まわるようになりました。昭和30年頃にはほぼ戦前の消費量にもどり、以後は年々増える一方です。
「経済白書」で「戦後は終わった」とうたわれたのが昭和31年。砂糖消費量の回復も、その戦後の終りを告げるものだったといえそうです。
小学生のムシ歯罹患率は、砂糖消費量の増減と5年ぐらい遅れて増えたり減ったりしています。砂糖が歯に悪い、というのは誰でもおわかりのことと思います。


実は、そんなことは常識でしょう。では、砂糖がなぜ歯に悪いのでしょうか。
歯の表面を指でさわってみるまでもなく、それは丈夫なエナメル質でおおわれています。つるつるして、かたく、まるで瀬戸物のようです。人間のからだの中で、歯が一番かたいといわれるのも、もっともなことです。
それが砂糖によってメチャメチャになってしまうのですから、砂糖はよほど悪物なのでしょう。
以前は、本当はそのことがよくわかりませんでした。しかし、最近の研究では、だいたい次のようなことが確かめられています。
人の口の中には、誰でも細菌がいます。これを常在菌といっていますが、そのうちムシ歯の病原菌として注目されているのが連鎖球菌といわれるものです。
連鎖球菌は、食物の中の砂糖を分解して、デキストランというネバネバしたものを作ります。ですから、 歯の表面にしっかりくっついて、そこに糖分がくれば、それをまたとり入れて、ねばねばしたものはどんどん増えていきます。 「こうして歯にしっかりくっついたものを歯垢(しこう)といいます。歯科医院で「プラーク」という言葉を聞いたことがありませんでしょうか。歯垢はプラークとも呼ばれています。
こうして歯にくっついた歯垢の中では、さらに糖分が分解されて酸が作られます。この酸が、歯の表面をとかし、ムシ歯を作っていくのです。それは歯にピッタリくっついていますから、そのままにしておくと、どんどん出来る酸の力で、あれほどかたい歯といえども次第におかされていく、というわけです。
砂糖がなぜムシ歯を作るのかは、これでおわかりいただけたと思います。
ムシ歯の患者が砂糖の消費量とともに増えてきたのも、ある意味では当然といえるでしょう。

食べ物には砂糖が意外に多い
砂糖が歯に悪いということがわかったとしても、いまでは砂糖の誘惑は、非常に強くなっています。
実は、砂糖の入っていない食べ物を捜す方がむずかしいかもしれません。
日本大学歯学部の深田英朗教授は、ムシ歯予防という面からいって、一日にとってもよい砂糖の消費量を一人50グラムと決めておられます。ところが、普通の食事の中にも、一日で20グラムぐらいは砂糖が含まれています。残りは30グラムです。
30グラムといっても、ピンとこないかもしれません。
たとえば、こうなります。びん入りのオレンジジュース1本に含まれている砂糖は、20グラム前後です。チョコレート一切れでさえ糖分はだいたい2グラムですから、一枚(10切れ)食べれば20グラムです。

見のがされやすいのがチューインガムで、これは1枚に3グラム近い砂糖が入っています。ですから、6枚も食べれば、それだけで15グラム以上の砂糖をとったことになるのです。しかもこれは、糖分がいつまでも口の中に残っていますから、よけい歯に悪いといえるでしょう。
日ごろ何げなしに食べているおやつ類の中には、意外に砂糖が多いものもあります。 どんな食べものに、どれだけの砂糖が入っているかをまとめたのがグラフ2です。これをごらんになって、どうお感じになるでしょうか。
「困ったな」と思われるかもしれません。「ヘー、そうか」と感心する人もあるでしょう。「一日50グラムなんて無理だ」とあきらめてしまう人も出てくるかもしれません。事実、日本人の砂糖消費量は昭和47 年で1人1日平均83.4グラムです。平均というのはクセ者ですが、ほとんどの人が50グラムの限界を越えているといえそうです。 「私たちは、それだけ甘いもの」にとり囲まれて生活しているのです。
しかも「甘さ」には辛さ、すっぱさ、にがさなど他の味覚にはない特別の魔力があります。それは、甘いものに対する偏向は、いったんすきになってしまうと、他の味で代用させることが出来ず、より甘いもの、もっと甘いものへと進んでいくことです。というと、まるで麻薬のはなしをしているようですが、最初はちょっとの甘さで満足していたのに、いつの間にかそれではもの足らなくなった、という経験はありませんでしょうか。甘党の人なら、大抵は思いあたるフシがあるはずです。この傾向を、専門家は「好偏向」とよんでいます。
テレビのスイッチをひねれば、チョコレートやガムの宣伝が目にとび込み、店先にはカラフルな甘味品が並んでいます。たしかに甘いものにとり囲まれた生活の中で、その魔力にうち勝つのは、並み大抵ではないと思わざるをえません。
ムシ歯予防のためには、よほどしっかりした家庭生活を築いていかなければなりません。ことに小さな子どものいる家庭ではなおさらのことでしょう。


育児の悪さがムシ歯を作る
「子どものムシ歯の激増をくい止めるためには、育児のあり方から変えていかなければならないのです。
歯医者の立場から、そう思います。たとえば、赤ちゃんが生まれたとします。歯が生えてくるのが、人によって差があるとはいえ、だいたい生後7~8ヵ月です。その頃になると赤ちゃんは、口の中がおかしいので、しきりに口を動 かしたり、手を口にやったり。どうしたのだろうと思ってお母さんが口の中をのぞき込んでみると、下の前歯がチョコンと頭を出しています。「実は、ムシ歯予防は、それからでは遅いのです。
歯が生える前から、赤ちゃんはおチチを飲みます。そのとき人工栄養に頼っていたとしますと、その中には、量の多少の差はあれ砂糖が入っています。ですから、どうしても甘党の子どもが出来やすいともいえます。

まして糖分のタップリ入った乳酸飲料を飲ませたりしていると、歯が生えはじめたとき、すぐにムシ歯に ならないのが不思議なくらいです。 「ここでは、私たちの試みたアンケートの結果をご紹介しましょう。
それは、お母さんを対象にしたものであり、歯の健康について、子どもたちがどのような環境におかれているかを調べたものです。
アンケートを行なったのは、昭和49年10月。全部で700人に回答をお願いし、回収したのは396 人です。その内わけは、小学校の子どもを通じてお願いしたのが296人、診療所の近所の一般家庭が45人、診療所の患者さんが35人、保健所を通じてお願いしたのが20人となっています。「それによると、まず、赤ちゃんを母乳だけで育てた人は、全体の20 %にしかすぎません。「多少は人工栄養を使ったが母乳を主体に育てた」 という人を含めても50%といったところです。「あとの50%は、母乳以外で赤ちゃんを育てているわけです。
次に、ミルク代りに乳酸飲料を飲ませたことがあるかどうかをみると、 4割近くが「ある」と答え、「ない」という答えは6割です。「また、離乳食に砂糖を入れたかどうかでは、「入れたことがある」が 43%で、「ない」が7%となり ました。

お母さんの思いちがい
なぜこんなことを調べたか、というのはこういうわけです。
人工栄養にせよ、乳酸飲料にせよ、 砂糖が入っているのはいうまでもありません。お母さん方は、「甘くないと子どもが飲まないから」といわれるでしょう。たしかにお母さんにとっては、そう思われることがあります。
しかし、そこには大人の二つの思いちがいもあるのです。「親自身、自分がおいしいと思っているものは子どももおいしいだろう、という思いちがいが一つ。
同じようなことですが、子どもは 生まれたときから甘いものを欲しがっているだろう、という思いちがいがもう一つです。

しかし、最初から甘いもの好きの子供はいません。生まれたばかりの赤ちゃんの味覚は、甘さも辛さも知りません。赤ちゃんを甘党にするのは、むしろ親の方なのです。
乳酸飲料を飲ませるのは、「乳酸」という言葉にまどわされてのことかもしれません。しかし、それは糖分だけではなく、酸度も強いのです。
ミルク代りに飲ませるとすれば、 赤ちゃんの寝る前でしょう。
普通、口の中のツバは酸度を下げる働きをしますが、夜寝ているときツバの働きもにぶくなりますから、 乳酸飲料の中の酸は、そのまま赤ちゃんの口の中に残ります。それが生えたばかりの乳歯を脱灰し、ムシ歯を作るのに、さほどの手間はかかりません。
離乳食の問題をとり上げたのは、ちょうど離乳の2~3歳の時期の味覚が、一生の味覚を大きく左右するからです。この時期に、砂糖の入った離乳食を与えすぎると、たいていは甘党の子どもが育ちます。その時期の味覚は、きわめてあざやかに印象づけられるものです。それと、歯の構造から考えて、赤ちゃんの歯の表面はとくに弱いものだということも知っていただきたいと思います。つまり、乳歯であれ永久歯であれ、表面のエナメル質は歯が生えてから年月をかけて少しずつかたくなっていくのです。ですから、最初の頃は、とくにムシ歯になりやすく、それだけにお母さん方も甘いものを与えないようにする必要があります。 こうしたいくつかの面から見て、アンケートに見られるお母さん方の育児法はどうでしょうか。いずれも4割から5割のお母さんは、歯科医から見れば「失格」といわざるをえないのです。


歯医者も砂糖の説明は少ない
「でも、それは母親ばかりの責任とはいい切れない面もあります。
歯のことについては、社会的な関心もまだ薄いのが現状だからです。「そのことも、アンケートで聞いてみました。「ここでは、歯についてのはなし(それは必ずしもムシ歯予防についてとは限りません)を、母親教室その他で聞いたことがあるかどうかを調べました。
「それによると、はなしを聞いたことがあるのは、母親教室17.2 %、保健所では24.7%、子どもの学校では26.0%。ことに妊産婦の母親教室で「歯のはなし」が聞かれる機会の少ないのには、改めてビックリします。
また、歯科医院の中で、母親はどのような知識をどの程度知らされているかをみれば、これはいっそう、母親ばかりが悪いのではない、と考えざるをえません。それによると、アドバイスを受けたことがあるという人が最も多い「ムシ歯の予防法について」でも、その割合は5割ちょっとです。「歯の磨き方について」の場合「ある」が48%、「ムシ歯の治療法について」は45%。それらが多い方の項目です。
問題になっている「砂糖の害について」は、20%強の人しか説明を受けていないという答えが返ってきています。つまり歯の磨き方については、比較的説明されている方なのですが、ただそれだけに終わっているというのが、多くの歯科医院の例なのかもしれません。ムシ歯の原因の詳しい説明は、専門の歯医者ですら、ゆっくりと説明するまでに至っていないのでしょう。
それにはさまざまな事情があるのでしょうが、ムシ歯の治療にのみ追われている現状を反省するとともに 歯科医の責任を痛感します。

甘いもの禁止宣言
はなしを砂糖とムシ歯のことにもどしましょう。
どうしたらムシ歯をなくすことが出来るかは、大抵の人にとっては、これまでの説明でおわかりのようにそれほど複雑なことではないのです。子どもの場合、甘いものを出来るだけ与えないことです。三歳ぐらいまでの間は、決して甘いものを食べさせないですませることでしょう。ミルク代りの乳酸飲料などは、歯の健康にとってはもってのほかです。
それほどまでしなくても、と考える人もいるかもしれません。「子どもがかわいそう」という声も聞こえそうです。
しかし、赤ちゃんのうちからムシ歯を作り、「イタイ、イタイ」と泣かせる方が、よほどかわいそうだと私たちは思います。
実際、赤ちゃんのときから砂糖を与えずに、子どもの健康な歯を守った人の例も少なくありません。「私たちのグループの一人の歯科医、 Bさんもその一人です。
左の写真をご覧ください。

Bさんの子ども(現在6歳)の乳歯が、これです。ムシ歯など一本もない、キレイな歯です。
Bさんは、奥さんの協力を得て、まだ歯が生えない頃から、長男には甘いものをいっさい食べさせないことにしました。おじいさん、おばあさんもいますので、その協力も欠かせません。最初はやはり「かわいそうだ」という 反発もありましたが、お母さんが何度もお願いしているうちに、よく理解してもらい、アメ、チョコレートはもちろん、おまんじゅう、ケーキ類はいっさい見せないようになりました。
これが、ムシ歯のない子を育てる上で最も大きな要因だったようです。
歯が生えたときから、食後には必ずお母さんが、ぬらしたガーゼで歯をふいてやりました。子どもも別に嫌がりませんでした。こうした習慣は、2~3歳になっての「歯みがき」の習慣にプラスしていると思われます。1歳くらいから歯ブラシを持つ練習をさせました。しかし、その頃はただ動作の習慣だけで、お母さんはあとでガーゼでふいてやることにしました。磨けていない証拠に、ガーゼはまっ黒になります。
こうして1歳半くらいまでは、子ども自身も甘味品を欲しがりませんでした。おやつは果物、ポテトチップなどが多く、それも食事に差し支えないよう、適当な時間に、適当な分量を与えるようにしたのです。
問題は、2歳ごろからです。外へ出て遊ぶ機会も増え、友だちも出来ました。
こんどは近所の方との問題が起こってきました。
近所のお母さんが、遊んでいる子どもたちに「ハイ、アメよ」と配っているとき、自分の子どもだけ断わるのには、お母さんも勇気がいります。あきれたようなカオをされたり、気を悪くされた方も少なくありませんでした。お母さんの最もつらいときですが、子どもの歯を守るためにはご近所のお母さんにもよく話して理解してもらう以外にありません。3歳ごろからは、子どもも、アメやチョコレートを欲しそうなカオをするようになりました。心配なのは、子どもがいじけないかということです。
そんなときは、お母さんが、どうして食べたら悪いかを話して聞かせ、それでも欲しがるときは1つ食べさせてみました。最初はうれしそうにしていましたが、全部食べないうちに「歯にくっついて気持が悪い」というようになりました。食べたあとは、歯を磨かせ、うがいを沢山させました。
4歳くらいになると「○○ちゃんは、どうして食べてもいいの」と、しつっこくお母さんに迫るようになりました。そんなときは、「じゃあ1つだけ」といって、必ず歯を磨く約束をさせたあとで甘いものを与えたこともありました。その頃になると、自分で磨く習慣も出来ました。朝は自分で磨かせ、夜はお母さんが磨いてあげました。「6歳になるまでの間に、2回フッ素を歯にぬりました。現在、1歳2ヶ月になる次男も同じように育てています。

ムシ歯追放はお母さんの役目
本当はこれが、子どものムシ歯防止にとって望ましい姿だといえます。少なくとも3歳くらいまでは、甘党にさせない育児を、ぜひ心がけてほしいものです。3歳や4歳になって、チョコチョコ遊びに出かけるようになってからでは、「甘いものはダメ」といっても、とても守れるものではありません。それまでの育児がどんなに大事かは、あらためていうまでもないでしょう。
最後に、これまでのまとめも兼ねて、子どもの口の中からムシ歯を追放するために、どこの家庭でも守ってほしい注意事項をあげてみます。
まず、砂糖のとりすぎを防ぐこと。そのためには、甘い物を食べる場合、必ず食後に。おなかがいっぱいだと、あまり食べることが出来ません。これが逆になって、食事の前に甘いものを食べると、砂糖はカロリーが大きいので、肝心の食事があまり食べられなくなります。
甘味品の買いだめは極力避けることも必要です。おやつの時間が不規則になりますし、しょっ中、口の中に甘いものが入っていないと気がすまなくなるからです。
それと、おやつにはお母さんの手作りを。子どもの勝手な買い食いを防ぐためにも必要なことでしょう。甘いものが欲しくなったら、イモなどの自然の甘みを利用してみるのも、賢明なお母さんのウデの見せどころです。
おやつには、果物、牛乳、チーズなどを中心に、それも時間を決めて規則的に与えることを、歯の健康のためにはおすすめします。
赤ちゃんのときに大事なことは、母乳で育てることです。母乳はほとんど甘味を感じません。それが子どもにとっては最高の食事なのです。なかには母乳に似せて作ったミルクもあります。ところが、甘くないというので、わざわざ砂糖を入れているお母さんもいます。それでは何にもなりません。これは余談になりますが、母乳は歯によいだけではありません。母乳で育った子どもは、カゼや肺炎にかかりにくいのです。最近のデータでは、母乳で育てた子どもは、人工栄養で育てた子どもと比べ、病気に対する抵抗力が4倍も強く、死亡率も 4分の1だということがわかっいます。
離乳食に甘いものは禁物ということも、これまでの説明でおわかりいただけただろうと思います。ムシ歯予防で次に大事なことは、 食べたら必ず歯を磨くということ。
磨く習慣をつけたいものです。「お母さんなり、お父さんなりが子どもと一緒に、歯を磨くことです。小さな子どもにだけ「歯を磨きなさい」と言っても、なかなか実行できるものではありません。
磨く環境を作るためには、洗面所をもっと明るくする必要があります。子どもは暗いところを嫌がりますので、洗面所が暗いと、ついつい歯磨きもおろそかになりがちです。そんな心理的な面も、見逃がしてはいけないことの一つです。それと、食事のコースの中に歯を磨くことを含める必要もあります。普通、食事が終わるとお茶を一杯のんで終わりとなるものです。それをもうちょっと先に進めて、お茶のあとで歯を磨くのです。
この感覚を植えつけるために、食卓の上に歯ブラシをおくのもよいでしょう。習慣となれば、歯を磨くことぐらい何でもないことです。このほかにも注意したいことは沢山あります。しかし、あまりあれこれ言っても、うんざりするばかりでしょう。ですから、最低これだけは守っていただきたい、と歯科医としてお母さん方におすすめします。
 

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